FAX電子化は、機器や保存先を先に決めるのではなく、受信から保存までの仕事を分解し、どの工程を電子化するか決めることから始めます。受信方法、確認する人、担当者への振り分け、保存ルールを順に書き出せば、紙を残す工程や例外対応も判断しやすくなります。まずは現行の流れを見える形にし、電子化する範囲と紙を残す条件を決めましょう。
FAX電子化の前に、受信業務の現状を書き出す
最初に、FAXが届いてから処理を終えるまでを時系列で並べます。たとえば、営業事務が受信した注文書を確認し、担当営業に渡し、受注処理後に所定の場所へ保管する場合、各工程の担当者と使っている機器・帳票を記録します。
記録するのは、受信方法だけではありません。受信に気づく方法、内容を確認する人、担当者が分からないときの対応、紙の保管場所、後から探すときの手がかりも書き出します。紙が発生する場所と、人が手で転記・配布している作業が見えると、電子化の対象を選びやすくなります。
- 受信:どの機器・方法で届き、誰が受信に気づくか
- 確認:誰が何を見て、読めない箇所をどう扱うか
- 振り分け:宛先や帳票から担当者をどう判断するか
- 保存:どこに、どの単位で保管し、何を手がかりに探すか
受信から保存までを一連の流れとして記録します。担当者が変わる場所、紙を別の人へ渡す場所、同じ内容を再入力する場所には印を付けると、見直しの優先順位を話し合えます。
受信方法を整理する
受信方法が紙かデータかによって、受信後の作業は変わります。現在の方法ごとに、受信の確認、内容の確認、担当者への引き渡し、保存までを書き分けましょう。電子化方式を検討するときは、利用中の機器や環境と連携できるかを候補ごとに確認します。
紙で受信している場合
紙で出力される運用では、用紙を誰が回収し、どこで内容を確認し、誰に渡すのかを確認します。受信トレイから部署ごとに配る、注文書を担当者別に仕分けるなど、実際の帳票と動きを一つずつ追います。紙を電子化する案があっても、読み取りや確認の手順、原本を残す条件は別に整理します。
データで受信している場合
複合機の機能によっては、受信FAXを紙に出さずに保存できます。キヤノンのimageRUNNER/Color imageRUNNERには、受信FAXを本体の「システムボックス」に保存する「FAXメモリ受信」機能があります。機種や設定、運用環境が自社に合うかは、候補ごとに確認が必要です。
キヤノンのimageRUNNER ADVANCEでは、受信FAXを電子ファイル化して保存する際、登録名称・FAX番号・受信年月日・受信日・宛先表名・回線のフォルダーを自動生成して振り分ける機能が紹介されています。こうした機能を検討する場合も、実際に使っている機器の対応状況と、担当者が探すときに必要な分類が一致するかを確かめます。
受信後の確認作業を分ける
次に、受信したFAXの何を誰が確認するかを分けます。注文書なら、注文内容や取引先など、後工程で使う情報を確認項目として書き出します。ここでは帳票ごとに項目を決め、読めない箇所や記載漏れがあったときの再確認先も明らかにします。
紙の場合は、原本を見ながら確認するのか、複写やスキャン後の画像を見るのかを記録します。データの場合は、どの画面やファイルを開いて確認するか、確認後に処理済みと判断する方法を決めます。紙とデータで手順が異なるなら、ひとつの手順に無理にまとめず別々に記載するのがポイントです。
- 内容が判読できない場合:再確認を依頼する相手と連絡方法
- 記載内容に不明点がある場合:処理を止めるのか、担当者へ回すのか
- 確認が終わった場合:処理済みと分かる印や記録の方法
担当者への振り分けルールを決める
振り分けは、担当者の経験だけに頼らず、判断材料を言葉にします。取引先名、帳票の種類、記載された部署名など、現在の担当者が何を手がかりにしているかを聞き取り、通常のルールとして記録します。
担当者が分からないFAXや、担当者が不在のときの扱いは、通常の流れと分けて決めます。たとえば、不明分をいったん特定の確認担当者に集める運用なら、その担当者と確認後の引き渡し先を明記します。振り分け先が空欄のまま止まる状態を避けるには、例外時の受け皿を定めておくことが判断の分かれ目です。
通常:判断材料 → 担当者 → 引き渡し方法
担当者不明:確認する人 → 確認内容 → 振り分け先
担当者不在:代わりの担当者 → 対応期限や連絡方法保存先と検索方法を決める
保存先は、受信したFAXを後から探す人の動きから考えます。取引先から注文内容の問い合わせがあったとき、取引先名・受信日・注文番号のどれを手がかりにするかを決め、保存単位やファイル名に反映します。
保存単位とファイル名
1件ごとに保存するのか、複数枚をまとめるのかを帳票の使い方に合わせて決めます。たとえば注文書を取引先ごとに探す業務なら、取引先名と受信日をファイル名に含める方法が考えられます。担当者が検索に使わない情報を並べるより、問い合わせ対応で実際に尋ねられる項目を優先します。
保管・閲覧のルール
保存期間や閲覧できる人は、社内ルールと対象書類の性質を踏まえて定めます。法人は、帳簿と取引等に関して作成または受領した書類を、事業年度の確定申告書提出期限の翌日から原則7年間保存します。国税庁は、電子取引データについても各税法で定められた期間の保存が必要とし、書類の保存期間は原則7年間または5年間と説明しています。
保存方法を決める前に、FAXがどのような取引として扱われるかを区別します。国税庁の通達解説では、通常のFAX送受信は、送受信の双方が書面で確認・保存する前提の一般的な利用状況を踏まえ、書面による取引として扱うと説明されています。一方、複合機等のFAX機能で書面に出力せず、電磁的記録の保存を前提にする場合は電子取引に該当し、電子帳簿保存法施行規則第4条の要件に従った保存が必要とされています。
国税庁は、電子取引・スキャナ保存などに関する一問一答を令和8年7月版として公開しています。運用を決める際は、書面を残す運用なのか、受信データを電子取引データとして保存する運用なのかを先に区分し、該当する保存ルールを確かめます。
紙の原本をスキャン後に廃棄できるかも、FAX全般に一律で当てはめないようにします。国税庁のスキャナ保存に関するFAQでは、紙原本はスキャナ画像との同等性を確認した後なら即時廃棄できる一方、入力期間経過後は紙原本も保存する必要があると説明されています。スキャンしたからすぐ原本を捨てられる、と決めつけないことが重要です。
個人データを含むFAXを情報システムで扱う場合、個人情報保護委員会のガイドラインは、担当者と扱うデータベース等の範囲を限定するアクセス制御を求めています。中小規模事業者の手法例として、個人データを扱える機器と従業者を明確にし、不要なアクセスを防ぐことも示されています。さらに、システムを扱う従業者は、正当なアクセス権を持つ者であることを識別結果に基づき認証するよう求められています。誰がどの保存先を閲覧・操作できるかを、担当業務に沿って定めましょう。
電子化する範囲を決める
受信・確認・振り分け・保存のすべてを一度に電子化する必要はありません。帳票や取引先、例外対応ごとに、どの作業を電子化するのかを決めます。たとえば、受信後の確認は現行のままにして保存だけデータ化するのか、担当者への振り分けまで変えるのかで、必要な手順や担当範囲が変わります。
紙を残す条件も、電子化の対象と同時に決めます。原本の保管が必要な書類、画像での確認が難しい帳票、例外時に紙で処理するものなどを区分し、対象外のFAXが通常の電子化フローに紛れないようにします。保存期間や電子取引データの扱いが関係する書類は、前節の区分を踏まえて判断します。
帳票・取引先・通常処理・例外処理の単位で、電子化する工程と紙を残す条件を並べます。担当者や保存ルールが決まっていない工程は、対象を広げる前に判断を済ませます。
試行運用で例外と作業の抜けを確認する
対象を絞り、実際の受信から保存までを試します。注文書など対象にした帳票が届いたとき、受信漏れなく確認できるか、担当者への振り分けに迷わないか、保存後に検索できるかを一連の流れで確かめます。通常ケースだけでなく、担当者不明や不鮮明な箇所があるケースも確認対象にします。
確認する項目
試行中は、受信したFAXの件数と処理した件数を照合し、未処理が残っていないかを見ます。振り分けで判断が分かれた帳票、再確認が必要になった箇所、保存後に見つけにくかったファイルは、理由と対応を記録します。問題が出た場合は、操作だけでなく、担当者の決め方や保存単位にも抜けがないか見直します。
本運用への移行条件
本運用に移る条件は、対象業務の受信から保存までを担当者が同じ手順で進められること、未処理や振り分け先不明のときの対応が定まっていること、保存したFAXを決めた手がかりで探せることです。条件を満たさない項目があれば、手順や担当範囲を修正してから再度試します。
まとめ
FAX電子化は、機器選びより先に、受信・内容確認・担当者への振り分け・保存を分けて現状を把握することが出発点です。受信方法や帳票ごとに電子化する工程を決め、紙を残す条件、保存期間、閲覧できる人、例外時の対応を整理してから試行運用に進みます。
まずは現行のFAX業務を、担当者と帳票名を含めて一枚の流れに書き出してみましょう。次に、担当者間で判断が分かれる箇所と紙を残す条件を話し合えば、どの工程から見直すか決めやすくなります。現状の流れを可視化し、電子化する範囲と紙を残す条件を決めることが、FAX電子化の第一歩です。
akinAI 編集部
参考・出典
- キヤノンのimageRUNNER/Color imageRUNNERには、受信FAXを紙に出さず、本体の「システムボックス」に保存する「FA… — https://faq.canon.jp/app/answers/detail/a_id/50278/~/%E3%80%90color-imagerunner%E3%80%91fax%E3%83%A1%E3%83%A2%E3%83%AA%E5%8F%97%E4%BF%A1%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81%E3%81%A8%E8%A8%AD%E5%AE%9A%E6%96%B9%E6%B3%95
- キヤノンのimageRUNNER ADVANCEでは、受信FAXを電子ファイル化して保存する際、登録名称・FAX番号・受信年月日・受信日・宛… — https://canon.jp/biz/product/printer/office-mfp/branding/gen3/story04
- 通常のFAX送受信は、国税庁通達解説では、送受信の双方が書面で確認・保存する前提の一般的な利用状況を踏まえ、書面による取引として扱うと説明さ… — https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/2206/pdf/1-3.pdf
- 国税庁は電子帳簿保存法の電子取引・スキャナ保存などの一問一答を令和8年7月版として公開している。 — https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/4-3.htm
- 法人は帳簿と、取引等に関して作成または受領した書類を、事業年度の確定申告書提出期限の翌日から原則7年間保存する。 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5930.htm
- 国税庁は電子取引データについても、各税法で定められた期間の保存が必要とし、書類の保存期間は原則7年間または5年間と説明している。 — https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/03-6.pdf
- 個人情報保護委員会のガイドラインは、個人データを情報システムで扱う場合、担当者と扱うデータベース等の範囲を限定するアクセス制御を求めている。… — https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/
- 国税庁のスキャナ保存に関するFAQでは、紙原本はスキャナ画像との同等性を確認した後なら即時廃棄できるが、入力期間経過後は紙原本も保存する必要… — https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0023007-095.pdf
