FAXをやめること自体を先に決めるのではなく、取引先ごとに代替手段と切り替え時期を相談し、合意した相手から段階的に移行することが大切です。
自社の入力・確認作業を減らすだけでなく、取引先が今の方法を続けたい理由にも目を向けます。注文方法や個別ルール、試行の進め方を一社ずつ整理すると、話し合う内容が具体的になります。
FAX受注をやめたい理由と、すぐに廃止しにくい背景
FAXで注文を受けると、届いた注文書の内容を販売管理システムなどへ入力し、読み取りにくい箇所を確認し、関係部署へ共有する作業が発生します。数量や納期の見落としが気になる場合は、どの工程で手戻りが起きているかも書き出してみましょう。
一方、取引先には、注文書の書式を変えたくない、担当者が新しい操作に不安を感じている、社内の承認手順を変えにくいなどの事情があるかもしれません。これは決めつけず、「続けたい理由」や「変更する場合に困る点」として聞き取ります。
自社側の課題と取引先側の事情を分ける
自社側では、受信後の入力、記入漏れの問い合わせ、営業・出荷担当への共有など、見直したい作業を工程別に整理します。取引先側については、注文の作成者、利用できる端末や方法、現行フローを変える負担を聞きます。
- 自社の課題:注文内容の転記、確認、部門間の共有、修正時の連絡
- 取引先の事情:使い慣れた注文書、担当者の操作への不安、社内手続きの変更負担
課題を分けると、提案する改善策も変わります。自社の入力負担が中心ならデータで受け取れる方法を検討し、取引先が操作変更を懸念しているなら、案内や試行の方法を先に相談します。
取引先ごとに注文状況と移行条件を整理する
移行時期を想定だけで決めないために、取引先別の一覧を作ります。注文頻度だけでなく、注文書の形式や特殊な記入ルール、担当窓口、利用できるデジタル手段を並べると、相談の順番を考える材料になります。
整理しておきたい項目
営業担当が把握している情報だけで空欄を埋めず、確認できていない内容は取引先に聞きます。特に、注文書のどの欄を自社の受注処理に使っているか、例外時に誰へ連絡するかは、切り替え相談の前に押さえておきたい点です。
- 注文方法と注文頻度
- 取引先の担当窓口と問い合わせ先
- 注文書の形式、特殊な記入ルール、必須項目
- 利用できる端末や希望する代替手段
- 個別対応の有無と、移行にあたって確認が必要な事項
確認済みの情報と未確認の項目を分けて記録します。移行の相談では、未確認の内容を質問に置き換え、取引先の回答と次の対応を同じ一覧に残すと、担当者間で状況を引き継ぎやすくなります。
取引先の状況に合わせてFAXに代わる方法を選ぶ
代替手段は、取引先が使えるか、自社で注文データをどう確認・処理するかの両方から比べます。候補にはWeb受発注システム、メール、Web-EDIがあります。切り替えを一度に進めにくい場合は、クラウドFAXやOCRを移行中の対応として検討する方法もあります。
手段ごとの向き・不向きを確認する
比較するのは名称だけではありません。取引先が必要とする操作、注文データの受け渡し方、社内の確認・入力の流れを並べます。たとえば、取引先が画面入力に移れるか、メール添付の注文書を受け取ったあと誰が処理するかを具体的に検討します。
- Web受発注:取引先が注文を入力する手順と、自社での受注処理を確認
- メール:注文書の形式、添付ファイルの受け取り後の確認・入力を確認
- Web-EDI:双方の利用環境と注文データの受け渡し方を確認
- クラウドFAX・OCR:移行中の受信や読み取りをどう扱い、いつまで使うかを確認
オンラインで注文を管理する仕組みの例として、Shopifyのヘルプでは管理画面の注文ページから注文を管理でき、電話・対面・メール販売について顧客の代わりに注文を作成できるとしています。ただし、この機能が自社の取引先との受発注に合うかは別の判断です。業務の流れや必要な機能を照らし合わせて候補を評価します。
Shopifyの日本向け料金ページには、Basicプランの年払い料金として月額3,650円が掲載されています。これは掲載されているプラン料金の情報であり、自社の受発注に必要な機能や、導入に伴う費用全体を示すものではありません。候補を比較する際は、料金だけでなく注文確認から社内処理までの流れを見ます。
取引先への説明では、切り替えの理由と相手の負担を伝える
「FAXをやめたい」という自社の事情だけではなく、何が変わるのか、取引先にどの操作をしてもらうのか、困ったときにどこへ連絡するのかを伝えます。案内を送る前に、相手が質問や懸念を伝えられる窓口も決めておきます。
説明で伝える内容
変更の背景、新しい注文方法、利用開始の目安、注文方法の案内方法をまとめます。操作に不安がある取引先には、操作案内や試行期間を用意できるか検討します。提供できる支援が決まっていない場合は、約束として案内せず、社内で対応可能な範囲を定めてから説明します。
件名:ご注文方法の変更に関するご相談
現在FAXで承っているご注文について、今後の受付方法を見直すため、ご相談申し上げます。
新しい注文方法として[代替手段]を検討しています。開始時期や操作方法は、貴社のご事情を伺いながら調整いたします。
現行の注文方法でお困りの点や、切り替えにあたって必要な確認事項がございましたら、[担当窓口・連絡先]までお知らせください。この文面は、開始日や支援内容を確定した案内ではなく、相談を始めるための例です。実際に送るときは、選定した注文方法、案内の手段、担当窓口を具体的に記載します。
切り替え時期は一律に決めず、取引先と段階的に合意する
案内日やFAX受付終了日を全取引先で同じにする前に、取引先ごとの準備状況を聞きます。案内、試行、本運用、FAX受付終了を分けて相談すると、どの段階で何を判断するか明確になります。
合意しておきたい項目
- 新しい注文方法をいつから使うか
- 試行期間を設けるか、期間中に何を確かめるか
- FAXをいつまで受け付けるか
- 新旧の注文方法が重なった場合にどちらを正とするか
- 切り替えが難しい場合の連絡先と次の相談時期
合意内容は、メールや取引先別の管理表など、関係者が後から見返せる形に残します。終了日を伝えただけで合意済みとみなさず、先方の回答と条件を記録します。
取引先と合意できていない終了日や例外対応を、一方的に確定したものとして扱わないことが重要です。準備が整っていない取引先がある場合は、個別に状況を聞き、移行の時期や進め方を調整します。
試行運用からFAX受付終了までの進め方
まず試行する取引先を選び、新しい方法で注文を受けたときの送受信や社内処理を確かめます。試行で見つかった問題を修正し、社内外への案内と問い合わせ対応を整えてから、合意した取引先ごとに移行します。
- 試行対象と確認する注文を決める
- 取引先へ操作や注文方法を案内する
- 注文の内容が社内で確認・共有・処理できるかを確かめる
- 不備や問い合わせがあった場合の手順を見直す
- 取引先と本運用の開始日、FAX受付終了日を改めて共有する
受付終了前に決めておくこと
新旧の注文が重なったときの扱いを決めておかないと、二重処理や注文の見落としにつながるおそれがあります。注文内容に不備がある場合の連絡方法と、移行が難しい取引先への相談窓口も、受付停止前に定めます。
社内では、営業、受注担当、出荷担当など、注文を受けてから処理する関係者に変更点を共有します。試行中に使った手順を更新し、FAXで届いた注文を誰がどのように扱うかも明記しておきます。
FAX受付終了前に確認したい運用・記録の注意点
FAX受付を終了しても、注文に関する問い合わせや急ぎの連絡が発生する場合があります。終了後の問い合わせ先、例外時の連絡経路、注文書や関連記録の保管方法を決め、担当者が同じ案内をできる状態にします。
国税庁は、注文書などに通常記載される取引情報を電磁的方式で授受する取引を「電子取引」と定義しています。また、ペーパーレスFAX機能を持つ複合機で取引情報を授受する場合も電子取引に該当するとしています。新しい方法だけでなく、現在の受け取り方がどう扱われるかも整理の対象です。
国税庁によると、電子取引データは各税法に定められた保存期間が満了するまで保存する必要があります。法人の注文書などの取引書類は、原則として事業年度の確定申告書提出期限の翌日から7年間保存します。法人が取引先と注文書などに相当する内容を電子データでやり取りした場合も、その電子データを一定の要件に沿って保存する必要があると国税庁は案内しています。
国税庁の令和8年7月版「電子帳簿保存法一問一答」には、電子取引データの保存要件や検索機能に関するQ&Aが掲載されています。検索項目として取引日付、取引金額、取引先が挙げられ、一定の検索機能要件が示されています。電子データで受け取る運用を始める場合は、保存先や検索方法もあわせて検討します。
電子取引データの訂正・削除を防ぐ方法の一つとして、国税庁は事務処理規程を定めて運用する方法を示しています。どの方法を採用するかは、電子データの扱いと自社の運用を照らして整理します。
FAXの受付終了と、注文記録の保存要件は別々に扱わず、移行前にあわせて確認します。注文の受け取り方法が変わると保存するデータも変わるため、適用される要件や社内規程に沿って手順を決めます。
注文記録に個人データが含まれる場合は、個人情報保護委員会のガイドラインも参考になります。安全管理措置の具体的方法は、事業規模や個人データの性質・量などのリスクに応じて必要かつ適切に決めるとされています。取扱責任者や担当者の範囲を明確にし、違反の兆候を責任者へ報告する体制も例示されています。
合意内容と社内手順をそろえる
取引先ごとの切り替え時期、利用方法、例外対応、受付終了後の連絡先を一か所にまとめます。営業担当が伝えた内容と受注担当の手順が食い違わないよう、一覧と説明資料を更新し、変更があった場合の共有先も決めておきます。
まとめ
取引先ごとの注文方法と移行条件を整理し、代替手段と切り替え時期を個別に合意することが、FAX受注からの移行を進める土台です。
まずは取引先別の一覧を作り、未確認の項目を聞き取るところから始めましょう。そのうえで、説明、試行、本運用、FAX受付終了の順に進め、合意内容と記録の扱いを社内で共有します。
akinAI 編集部
参考・出典
- 国税庁は、注文書などに通常記載される取引情報を電磁的方式で授受する取引を「電子取引」と定義している。 — https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/07denshi/01.htm
- 法人は注文書などの取引書類を、原則として事業年度の確定申告書提出期限の翌日から7年間保存する。 — https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5930.htm
- 国税庁の令和8年7月版「電子帳簿保存法一問一答」には、電子取引データの保存要件や検索機能に関するQ&Aが掲載されている。 — https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/4-3.htm
- 国税庁は、電子取引データの訂正削除を防ぐ方法の一つとして、事務処理規程を定めて運用する方法を示している。 — https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/07denshi/02.htm
- 国税庁は、法人が取引先と注文書などに相当する内容を電子データでやり取りした場合、その電子データを一定の要件に沿って保存する必要があると案内し… — https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/aramashi2025/pdf/01-02.pdf
- 個人情報保護委員会のガイドラインは、安全管理措置の具体的方法を事業規模や個人データの性質・量などのリスクに応じて必要かつ適切に決めるとしてい… — https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/
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- Shopifyの日本向け料金ページには、Basicプランの年払い料金として月額3,650円が掲載されている。 — https://www.shopify.com/jp/pricing?country=jp&lang=ja
