受注入力の自動化は、ツールを決める前に、受注処理のどこを自動化し、どの状態を人の確認に回すかを決めることが先です。現状のフローを見える化し、通常処理と例外処理、例外時の担当・再開条件を定めてから自動化範囲を選びます。

受注入力の自動化で最初に決めること

自動化の目的

「入力作業を減らしたい」だけでは、自動化する工程を絞りきれません。電話・FAX・メールの受付から、注文内容の確認、販売管理システムへの登録、後続担当への引き継ぎまでを並べ、どこに時間や手戻りが生じているかを洗い出します。

次に、改善したい状態を具体化します。たとえば「注文書から品番と数量を入力する時間を減らす」のか、「入力後に担当者が行う内容照合まで見直す」のかで、自動化の対象は変わります。作業の削減だけでなく、処理のどの部分を変えるかを先に決めるのがポイントです。

  • 自動化の目的:入力時間、転記、確認待ちなど、改善したい作業
  • 対象業務:受付から登録、引き継ぎまでのどの工程か
  • 人が判断する範囲:取引条件や注文内容の確認など、担当者に残す作業
  • 例外対応:内容不備や情報の不一致があった場合の停止・連絡・再開方法

たとえば、品番・数量・納期がそろった注文は登録候補にし、品番が空欄の注文は担当者の確認に回す、といった境界を置きます。通常の入力と判断が必要な処理を一つの流れに混ぜないことが、対象範囲を決める出発点です。

現状の受注フローを担当者ごとに見える化する

受注から登録まで

受付方法ごとに、受信から登録完了までの手順を書き出します。メールの注文書は添付ファイルを開き、FAXは紙面を見ながら入力するなど、チャネルによって確認方法や転記の手順が異なる場合があります。担当者が行う作業だけでなく、次の担当へ渡すタイミングも記録します。

  • 受付チャネルと受注書類:電話、FAX、メール、注文書など
  • 担当者の作業:内容確認、品番検索、数量・納期の入力、登録後の連絡
  • 確認ポイント:取引先名、商品コード、単位、数量、希望納期
  • 手作業の補完:別の一覧表との照合、過去注文の参照、担当者への口頭確認

担当者Aは品番を商品一覧で照合し、担当者Bは過去の受注履歴を見てから入力する、といった違いも省かずに記します。違いが出る箇所を並べると、共通ルールにできる作業と、取引条件など個別判断が必要な作業を分けやすくなります。

Power Automateのプロセスマイニングは、会計や受注から入金までのイベントログを使い、業務プロセスのマップと指標を表示します。イベントログを分析するには、プロセスの1件を表すCase IDが必要です。受注番号など、どの記録が1件の受注に対応するのかを決められるかが、分析に使うデータを整える際の確認点です。

Power Automateのタスクマイニングは、PC上の操作記録を分析し、作業手順や共通するミス、自動化候補の把握に使えます。画面上で同じ操作を繰り返す工程がある場合、担当者ごとの手順を見直す材料になります。

通常処理と例外処理を分けて整理する

処理を二つに分類

通常処理は、決まった手順と入力項目で処理できる注文です。例外処理は、情報の不足や不一致などがあり、追加確認や担当者の判断を要する注文です。分類の基準を「担当者がいつもと違うと感じたら」だけにせず、注文書や登録画面で確認できる状態に置き換えます。

  • 通常処理の候補:必須項目がそろい、取引先・商品情報を照合できる注文
  • 例外処理の候補:注文内容の不足、記載の読み取りにくさ、登録情報との不一致
  • 分類の確認:候補となる状態が実際の受注で起きているか、記録や担当者への聞き取りで確かめる

たとえば「納期が未記入なら例外」「注文書の品番と登録済みの商品コードが一致しなければ例外」のように、誰が見ても同じ分類になる条件を記します。例外候補が実際に発生しているかは、FAXの読み取りや取引先の注文形式も含めて確かめてください。

分類の判断基準

通常処理は、決めた入力項目と手順で進められる注文。例外処理は、項目不足・判読困難・登録情報との不一致など、追加確認が必要な注文です。担当者の感覚ではなく、具体的な状態を分類条件にします。

確認待ちや内容不備の担当・対応ルールを決める

例外時の対応を明確に

例外を検知した後の流れは、発見者、取引先へ問い合わせる担当者、回答を受けて再処理する担当者に分けて決めます。担当者が不在のときの引き継ぎ先も決めておくと、注文が誰の手元で止まっているかを追いやすくなります。

状態名は「保留」「確認中」「再入力」など、次に何をするかが分かる言葉にします。記録する内容は、対象の受注番号、不備の項目、問い合わせ日、回答内容、再開条件など。たとえば、納期の回答を受けて受注情報を更新した時点で再処理する、と条件まで定めます。

状態:確認中
記録:受注番号/不備項目/取引先への問い合わせ日/回答内容
次の担当:取引先から回答を受けた担当者
再開条件:不備項目の回答を受注情報に反映した後
不在時:定めた引き継ぎ先へ受注番号と対応状況を共有

Power Automateで確認を承認工程として扱う場合、「開始して承認を待機」アクションは承認者の応答を待ってから後続アクションを実行します。承認方法は「最初に応答」か「全員の承認が必須」から選択でき、後者では全承認者の応答が必要です。

承認要求はメール、承認センター、またはPower Automateアプリから承認・却下できます。取引先への問い合わせや受注情報の修正そのものを自動で完了するという意味ではありません。誰が回答を記録し、どの条件で後続処理に戻すかは別途決めておきます。

自動化する範囲を業務フローから選ぶ

自動化範囲を選定

フローの中から、入力項目や手順が定まっている工程と、担当者の判断が残る工程を切り分けます。取引先名や商品コードを決めたルールで照合できる部分は自動化候補にし、注文内容の不足や条件の判断は担当者へ渡す、といった分け方ができます。

対象範囲は、通常処理だけから始める方法と、通常処理に加えて確認作業も含める方法があります。例外が起きたときに自動処理を止め、担当者へ引き継ぐ設計も選択肢です。どの項目が空欄・不一致なら止めるのかを先に決めると、処理対象外の注文を明確にできます。

Power Automate for desktopは、既定ではアクションのエラー発生時にフローを停止します。アクション単位のエラー時で処理を設定でき、複数アクションのエラー処理にはブロック エラー発生時アクションを使えます。再試行に失敗した後の例外処理も指定できます。

アクションの再試行は、既定では2秒間隔で1回です。失敗後にフローを続行する設定もあります。注文の登録でエラーが出た場合、続行すると後続処理と登録状態が食い違う可能性がないかを工程ごとに見極め、停止・記録・担当者への引き継ぎのいずれにするかを決めます。

自動化の方法を業務の条件と照らし合わせる

方法を業務に合わせる

候補にはExcelマクロ、RPA、AI-OCR、受発注システムがあります。方法を先に決めるのではなく、受付方法、扱う書類、既存の手順、入力先との連携可否から比べます。たとえば、注文内容がExcel上で扱われているのか、紙や画像の注文書をシステムへ転記しているのかで、検討する工程は異なります。

  • Excelマクロ:表計算ファイルを使う作業のうち、定型化できる工程があるか
  • RPA:画面操作を含む手順と、エラー時に止める条件を定義できるか
  • AI-OCR:紙や画像からの読み取り後に、誰が内容を確認し、不備をどこへ振り分けるか
  • 受発注システム:現在の受付方法や既存システムとの連携可否を確認できるか

紙や画像の注文書を扱う場合は、読み取り工程だけでなく、読み取り結果の確認や不備時の振り分けまでを対象に含めて検討します。機能の有無や既存システムとの連携可否は製品や環境によって異なるため、選定時には実際の注文書と登録手順を使って確認します。

保存と委託の確認

国税庁は、注文書などに相当する電子取引データを受領または交付した場合、その電子取引データの電子保存が必要と案内しています。自動化の方法を検討する際も、受注データの保存方法を確認してください。個人データの取扱いを委託する場合、個人情報保護委員会のガイドラインは、委託元に委託先への必要かつ適切な監督を求めています。

導入前後の確認方法と運用ルールを整える

運用開始後も見直す

導入前に、処理にかかる時間、入力内容の修正、確認待ちや内容不備の件数など、比較したい項目と記録方法を決めます。運用開始後も同じ項目を記録すれば、想定した範囲で処理できているか、例外として止まる注文がどの程度あるかを実データで見直せます。

取引先の注文形式や社内手順が変わった場合に、誰がフローや設定を更新するかも決めておきます。変更後は、通常処理の注文と例外条件に該当する注文の両方を使って、登録内容と引き継ぎが想定どおりか確認する運用にします。効果は事前に決めつけず、導入前後の記録に基づいて対象範囲を調整します。

まとめ

受注入力の自動化では、まず受付から登録までの現状を担当者ごとに見える化し、通常処理と例外処理を分けます。確認待ちや内容不備が起きたときの担当者、記録する情報、再開条件を定めたうえで、自動化する工程と停止条件を選びます。 次の一歩は、現行フローと実際に起きた例外を集め、担当者間で共通の手順に整理することです。

akinAI 編集部

参考・出典